岩国国際観光ホテル 〒741-0062山口県岩国市岩国1丁目1-7 電話: 0827-43-1111 岩国城下を二分して流れる大河の錦川。 そこに架かる木造の造形美「錦帯橋」は5連のアーチ構造を有する、木造橋としては我が国最大の文化遺産です。 錦帯橋は元々「城門橋」、つまり城の大手門に架かる橋でしたが、架橋されたときに城はすでに取り壊されていました。 錦帯橋の創建には、「流れない橋を架けたい」藩主や藩民の切なる願いや、岩国藩誕生に至る歴史的背景の中に橋成立の謎"小藩の熱き思い"が秘められています。 戦国時代、毛利家を宗主と仰ぐ吉川宏家は慶長5年(1600年)の関ヶ原の戦いに西軍に組みしながら、毛利・徳川両家間の和議成立に奔走し、戦いでは中立を厳守し西軍敗北の一因となりました。しかし、その行動は結果的に徳川幕府による毛利家取り潰しを防ぐことになります。 毛利家は防長二国に減封され、吉川家は出雲国富田から周防3万石(その後6万石)に移行され、近世岩国藩の基礎を築いたのです。 岩国城破却から58年後の延宝元年(1673年)、三代藩主吉川広嘉は、それまでの平坦な柱橋にかえて木造5連のアーチ橋「錦帯橋」を架橋しました。 それは城門橋と呼ぶより、岩国藩にとってはまさに城に取って代わる存在です。橋の上部は木造木組構造を駆使し、下部はアーチ部分の橋脚を排し、築城技術を取り入れた洪水に耐える石垣づみの橋脚を配しました。まさに、錦帯橋は藩の「城」と呼ぶにふさわしい構築物といえます。錦帯橋が秘める 小藩の熱き思い 初代岩国藩主となった吉川宏家は慶長13年(1608年)錦川の右岸に岩国城を創建しましたが、元和元年(1615年)幕府により発せられた「一国一城令」により破却されることになります。 つまり、幕府の毛利家存続は、単なる毛利家の存続ではなく、吉川家と毛利家を一藩とみて存続させたことが明らかとなったのです。 宏家は宗家を重んじ、自らの城を破却したのです。 以降徳川268年間にわたり、岩国藩は毛利の「支藩」としての悲哀をかみしめ、大名(諸候)に列せられたのは、明治元年(1868年)になってからことです 錦帯橋の名前の変遷 橋が完成して以降、「五龍橋」「城門橋」「龍雲橋」など、様々な名前で呼ばれた錦帯橋。宝永年間(1704〜)以後、文学的な表現として「錦帯橋」と呼ばれるようになりました。再建された錦帯橋の特色 地元山口県人はもとより、日本全国から愛され続ける錦帯橋。NHKで放送された「21世紀に残したい日本の風景」では、中国地方で堂々の1位に輝き、その存在感をあらためてアピールしました。知っていますか?虹の架け橋 橋と日本人(上田篤著/岩波新書)に、次の記述があります。「中国の北宋の都に、虹橋と呼ばれる橋があった。12世紀のころの都の繁晶記である『東京夢華録』によると、東水門の外七里のところにある橋を虹橋と言う。この橋には橋脚がなく、すべて巨大な材木を使ってアーチ式に架橋し、朱い塗料で飾りたてたところは、ちょうど空に虹が架かったようである。この虹橋については、張択端という人の「清明上河図」という絵があって、この虹橋とその賑わいの模様が、詳細に画かれている。」 この虹橋の再現番組がテレビで放映されました。錦帯橋の木造アーチと同じような構造を持つ橋が昔の中国に在ったということです。日本と中国の不思議な縁を感じます。流失から再建へ
昭和25年(1950年)のキジア台風で、276年もの間風雪に耐え「国宝に」との話もあった名橋は、多くの市民の見守る中、濁流に飲み込まれました。 錦帯橋を失ったことは市民にとって大きな悲しみでしたが、その日の岩国市議会では、「錦帯橋復旧再建に関する決議」が行われ、全市を挙げての再建運動が展開されました。 昭和26年(1951年)再建に向けて起工式が行われ、昭和28年(1953年)1月に渡り初め式が、5月に完工式が挙行され、流失からおよそ2年の歳月を費やし、岩国の象徴と誇りでもあった錦帯橋は、市民の粘り強い運動、熱意のもとによみがえりました。再建された錦帯橋の特色 流失した橋台は、築城技術を応用した石造りでしたが再建後の橋台には、強度を確保するために橋台基礎に"円形井筒工法"を採用し、中心部にコンクリートを打ち込み万全を期しました。 また、橋桁の荷重を受け止める桁受は、隔石といわれる石でしたが、再建後は、沓鉄と呼ばれる鋳鉄が使用されています。
匠の技
河原から錦帯橋本体の構造部(裏面)を見上げると、そこには巻き金とカスガイを使用した"木組みの技法"を見ることができ、頑丈な木組みの様子がわかります。橋上からの圧力で強度が増し、一層頑丈になる仕組みです。 幕府の「一国一城の制」により、天守を破却され、藩の象徴を失った岩国藩にとって、錦帯橋は城に代わる象徴、まさに『水平の天守・水平の塔』なのでした。 錦川の河原からの眺めは必見のスポットです。